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記憶の残滓 - 憧れ

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昔の話。


中高一貫の女子校。

中等部の新入生だった私。

勧誘されて親友と入部した天文部。

双子の姉妹の部長と副部長。


部長(姉)は三つ編みのおっとりしたタイプ。やさしいお姉さん的な感じで部員皆に慕われていた。

副部長(妹)はショートカットで少し無愛想。正論で物事に切り込むことが出来る人であるがゆえに、厳しいと評判。


廊下に張り出された期末試験の結果、二人とも仲良く学年上位に入ってた。


当時高三だった部長と副部長が引退するまで、ほんの半年。

特に親密になって言葉を交わしたわけでもない。

今どこで何をしているのか知らないどころか、名前すら忘れた。

それなのに最近ふと、副部長の端麗な横顔が脳裏をよぎった。


懐かしくなって記憶の断片をつなげてみた。

それだけのこと。



それだけのことなのだが、今振り返ってみて思う。

あの副部長こそが、私にとって中高生時代で唯一の憧れの先輩だったのだな、と。

あの人に近づきたくて、中三のとき髪を短く切った。

クールに振舞いたくて、口数を減らした。

やさしさの省かれた言葉で、人を傷つけた。


あれから何年もたった今も、天文部の副部長(双子の妹)は記憶の中で美化され、私の中に存在している。

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